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このページでは特定商取引に関する法律の条文を紹介します。

特商法(通達)
特定商取引に関する法律等の施行について(通達)
 
平成13年5月31日
各都道府県知事あて
                     厚生労働省医政局長
                     厚生労働省健康局長
                     農林水産省総合食料局長
                     経済産業省大臣官房商務流通審議官
                     国土交通省総合政策局長
 
 
 
 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号。以下「法」という。)等の施行にあたっては、下記により運用を行うようお願いいたします。
 なお、平成10年6月1日付け健政発第682号、生衛発第929号、10食流第1555号、平10・05・28産局第1号、運消第18号「訪問販売等に関する法律等の施行について」は廃止します。
 
                     記
 
第2章(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売)関係
 
第1節(定義)関係
1 法第2条(定義)関係
(1) 「営業所」、「代理店」について
 「営業所」とは、商法上登記を必要とする本店、支店のみでなく広く営業の行われる場所をいい、本法においては、通常は店舗ということになる。「代理店」は、代理商の営業所のことであり、代理商とは、一定の商人のために継続反復してその営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者をいう。
(2) 「露店、屋台店その他これらに類する店」(特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号。以下「省令」という。)第1条第3号)について
 省令第1条第3号の「露店」とは路傍等において屋根を設けることなく物品を陳列して販売を行うもの等をいい、「屋台店」とは持ち運ぶように作った屋根のある台に物品を陳列して販売を行うもの等をいう。また、バス、トラックに物品を陳列し、消費者が自由に商品を選択できる状態において販売を行うもの等は、外見上何を販売等しているかが明確であれば「その他これらに類する店」に該当する。
(3) 店舗に類する場所(省令第1条第4号)について
 上記の「営業所」、「代理店」、「露店、屋台店その他これらに類する店」は、いずれも、長期間にわたり継続して販売等の取引を行うための場所を指すものである。これに対して、省令第1条第4号の「一定の期間にわたり、指定商品を陳列し、当該指定商品を販売する場所であつて、店舗に類するもの」は、これら以外の比較的短期間に設定されるものを念頭においており、@最低2、3日以上の期間にわたって、A指定商品を陳列し、消費者が自由に商品を選択できる状態のもとで、B展示場等販売のための固定的施設を備えている場所で販売を行うものをいう。
 具体的には、通常は店舗と考えられない場所であっても、実態として展示販売にしばしば利用されている場所(ホテル、公会堂、体育館、集会場等)で前記3要件を充足する形態で販売が行われていれば、これらも店舗に類する場所での販売に該当する。
 なお、上記3要件はすべて充足されていなければならないのは当然である。例えば、2、3日以上の期間にわたって指定商品を陳列し、販売のための固定的施設を備えている場所において、原則として事業者が指名した者等特定の者のみが入場して販売が行われる事例が見られるが、この場合であっても、その場で消費者が契約の申込み又は締結に関し販売員が取り囲む等消費者が自由意思で契約締結を断ることが客観的に見て困難な状況の下で販売が行われているときには、消費者が自由に商品を選択できる状態にあるとは言えず、Aの要件を欠くこととなるため、そのような場所は本号にいう「店舗に類する場所」に該当しない。
(4) いわゆるSF商法(催眠商法)の取扱いについて
 SF商法の多くは集会場、会議室等を利用した販売形態であるため、まず、その販売の場所が省令第1条第4号の要件(前記(3) 参照)に該当するか否かで本法の適用の有無を判断することとなるが、SF商法は、その販売態様(最初に無料の商品や低廉な商品を来場者に供給し、その後雰囲気の高まったところで販売業者の売込もうとする商品を展示して商品説明を行い、その商品を購入させる方法等)からみて、販売商品を最初から陳列し、来場者に自由に選択させる通常の展示販売とは著しく相違し、前記(3) の要件に該当しないのが通例であるので、このような状態で販売を行う限りにおいては本法の適用を受けることとなる。
 また、販売を行う場所が前記(3) の要件に該当する場合であっても、ビラ若しくはパンフレットにより、又は拡声器を用いて、販売意図を明らかにせず、顧客を誘引した場合も本法の適用を受けることに留意されたい(後記(6)参照)。
(5) いわゆるキャッチセールスについて
 法第2条第1項第2号の「営業所以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた」とは、いわゆるキャッチセールスによる勧誘方法を規定したものである。一方、路上、喫茶店等の営業所以外の場所において契約を行うものは法第2条第1項第1号に該当する。
 「呼び止め」とは、特定の者に対して呼びかけることにより、その注意を向けさせる行為を意味し、必ずしもその場所に停止させることは必要でなく、併歩しつつ話しかける行為も含まれる。
 また、「同行させ」る行為とは、呼び止めた地点から営業所等まで相当程度の距離を、呼び止めた者が案内していくことを意味する。したがって、通常の店舗販売業者が店舗の前で行う呼び込みは、「同行させ」る行為が欠けており、本号に該当しない。
(6) いわゆるアポイントメントセールスについて
 特定商取引に関する法律施行令(昭和51年政令第295号。以下「政令」という。)第1条に、いわゆるアポイントメントセールスの誘引方法を定義している。
 政令第1条第1号は業者が販売意図を明らかにしないで消費者を呼び出す場合について規定したものである。例えば、「あなたは選ばれたので○×を取りに来て下さい。」と告げる場合や、本来の販売の目的たる商品等以外のものを告げて呼び出す場合が本号に該当することになる。なお、勧誘の対象となる商品等について、自らがそれを扱う販売業者等であるこ
とを告げていれば、通常は当該商品について勧誘する意図は告げていると解される。ただし、この場合であっても、「見るだけでいいから。」と告げるなど明確に販売意図を否定しているときには、当該商品について勧誘する意図を告げたことにはならない。また、ビラ、パンフレット及び拡声器については、「商品を無料で配布する。」等と告げて行ういわゆるSF商法として行われるものを念頭においたものである。
 政令第1条第2号は、販売意図は明らかであるものの、特に誘引効果が強い場合を規定したものである。例えば「あなたは特に選ばれたので非常に安く買える。」等のセールストークを用いる場合はその真偽にかかわらず本号に該当することになる。
(7) 法第2条第2項の解釈について
 法第2条第2項の「郵便」とは郵便法(昭和22年法律第165号)に規定される「郵便」のことで、これには通常の封書、葉書のほか、現金書留等も含まれる。また、小切手や郵便為替を、書留等の郵便により送付する場合も当然本法第2条第2項の「郵便」に該当する。
 また、省令第2条第2号の「情報処理の用に供する機器」とはパーソナルコンピューター等を規定したものであり、パソコン通信やインターネット等を通じて申込みが行われるものがこれに該当する。
 この場合、例えば電子掲示板等において単に自己が所有する物品を廉価で譲渡する旨表示するのみである等反復継続性が認められない広告をした者は本項にいう「販売業者」に該当しないが、営利の意思をもって反復継続して取引を行う意思が広告より客観的に認められる限りにおいては、当該広告をした者は法人であるかを問わず「販売業者」に該当する。
(8) 法第2条第3項の解釈について
(イ) 「電話をかけ」とは、電話により通話状態に入ろうとすることをいい、通話には、録音音声、人工音声によるものも含まれる。
(ロ) 「政令で定める方法により電話をかけさせ」とは、事業者が欺もう的な方法により電話をかけさせ、その電話の中で勧誘行為を行うケースを規定しており、政令では電話をかけさせる方法として次のとおり定めている。
 政令第2条第1号は、販売業者等が販売目的を明らかにしないで消費者に電話をかけさせる場合について規定したものである。例えば、「至急下記へ電話ください。○○○−○○○○」等と記載されたハガキを配布するケースのように全く販売目的を告げないで電話をかけさせるもののほか、「海外旅行に安くいける会員制のクラブです。興味のある人は○○番へお電話ください。」と告げて、電話をかけてきた相手に実際には英会話の教材の購入を勧誘するケースのように、何らかの商品を販売する意図は告げているものの本来販売しようとする商品(役務)について告げずに電話をかけさせるものが本号に該当する。
 政令第2条第2号は、販売意図は明らかであるものの、特に誘引効果が強い場合を規定したものであり、例えば、「あなたは抽選に当選されたので非常に安く買えます。」等のセールストークを用いて電話をかけさせる場合は、その内容の真偽にかかわらず本号に該当する。
 なお、新聞や雑誌等に掲載されている通信販売広告や商品広告により消費者から自発的に電話をかけた場合には、その電話の中で事業者が売買契約等に関する勧誘を行ったとしても、電話勧誘販売には該当せず、通信販売に該当する。
(ハ) 「勧誘」とは、販売業者等が購入者等の契約締結の意思の形成に影響を与える程度の勧
め方である。したがって、「○○を買いませんか。」等直接購入を勧める場合のほか、その商品を購入した場合の便利さを強調する等客観的にみて購入者の購入意思の決定に影響を与えていると考えられる場合は「勧誘」に含まれる。
 勧誘に該当する例として、
 「今度出ました新製品の○○はいかがですか。」
 「一般には手に入らない商品ですが、特別に今回お分けしています。」
 「この商品を購入されるときっとお役に立ちます。」
等が挙げられる。
 また、勧誘には該当しない例としては、
 「カタログを送付いたしましたので、御覧下さい。」
 「ご注文をお待ちしております。」
 「前回のご注文からしばらくご無沙汰しておりますが、何か不都合はありませんか。」
等が挙げられる。つまり、購入意思の決定を全面的に購入者に委ねている場合は、「勧誘」には該当しない。
(ニ) 「勧誘により」とは、「勧誘されたことにより」の意味であり、消費者による申込み又は契約の締結が事業者の電話勧誘に起因して行われていることが要件となる。
 どの程度の期間が経てば「勧誘により」に該当しなくなるかについては、勧誘の威迫性、執拗性、トークの内容等により異なるため、日数で一概に規定できるものではないが、販売業者等から最後に電話があった時から1ヶ月以上も経ってから申込みがあったというようなケースはこれに該当しない場合が多いと考えられる。
(9) 法第2条第4項の「指定商品」、「指定権利」及び「指定役務」について
(イ) 法第2条第4項の「指定商品」、「指定権利」及び「指定役務」は、政令別表第一から
第三までに掲げられているが、同表各号に該当する商品、権利及び役務の具体例は、別紙のとおりである。
(ロ) 指定商品の範囲及び分類については、原則として、総務庁(現、総務省)統計主幹編集の日本標準商品分類(平成2年6月改訂)によっているので、同分類を参考とされたい。
 ただし、割賦販売法(昭和36年法律第159号)の「指定商品」との整合性を保つため、表現を同法に準じているもの等もある。
(ハ) また、指定商品については、たとえその商品が中古品、輸入品又は注文生産品であって
も対象になる。
(10)「販売業者」及び「役務提供事業者」について
 「販売業者」又は「役務提供事業者」とは、販売又は役務の提供を業として営む者の意味であり、「販売又は役務の提供を業として営む」とは、営利の意思をもって、反復継続して取引を行うことをいう。なお、営利の意思の有無については客観的に判断される。
 
第2節(訪問販売)関係
1 法第3条(氏名等の明示)関係
 本条に基づき明示すべき内容は、@「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称」及びA「商品若しくは権利又は役務の種類」である。@については、例えば会社の販売員が訪問した場合には当該販売員の氏名ではなく、当該会社の名称を告げなければならない。法人にあっては一般的には商号をいい、例えば、正規の名称が「梶~×商事」であるにもかかわらず、「○○公団住宅センター」や「○○アカデミー」等の架空の名称や通称のみを告げることは、本号にいう「氏名又は名称」を告げたことにはならない。Aについては、例えば「化粧品」等商品の具体的イメージがわかるものであればよい。
 告げる方法は、口頭でも、書面でもよく、特に身分証明書等を携帯提示することを法律上義務づけているわけではないが、できる限り身分証明書等(例えば社団法人日本訪問販売協会又はその会員の発行する「訪問販売員教育登録証」)を携帯提示するよう指導されたい。
 
2 法第4条、第5条(書面の交付)関係
(1) 書面の交付義務者について
 書面の交付は、必ずしも、契約の当事者である法律上の販売業者又は役務提供事業者が自ら行う必要はなく、事実上契約締結事務を行っている者に代行させてもよい。
 例えばリース会社が当該役務提供契約の当事者となる場合には、法律上の役務提供事業者であるリース会社に代って事実上契約締結事務を行っている者である加盟店が書面の交付を行ってもよい。
(2) 書面の記載事項について
 (イ) 法第4条第2号中「代金支払方法」として記載すべき事項は、持参・集金・振込、現金
・クレジット等の別であり、分割して代金を受領する場合には各回ごとの受領金額、受領回数等が含まれる。
(ロ) 法第4条第3号の「商品の引渡時期」及び「役務の提供時期」については、商品の引渡
し又は役務の提供が複数回にわたる場合は、回数、期間等が明確になるよう記載しなければならない。この場合、書面上に記載しきれない場合は、「別紙による」旨を記載した上で、法第4条又は第5条との一体性が明らかとなるよう当該別紙を同時に交付することとする。また、「権利の移転時期」については、実質的に権利の行使が可能となる時期を記載しなければならない。
(ハ) 法第4条第4号のいわゆるクーリング・オフに関する事項については、省令第6条に規定するところにより記載することとなる。また、法第9条第1項の政令で定める指定商品を販売する場合及び現金取引でその総額が3,000円未満のときにクーリング・オフができないこととする場合は、その旨記載する義務が課されていることに留意されたい。
 なお、クーリング・オフについては、契約の申込みを受け又は契約を締結する際、必ず口頭で説明を行うよう販売業者等を指導されたい。
(ニ) 省令第3条第4号の「商品名及び商品の商標又は製造者名」及び第5号の「商品の型式
又は種類(権利又は役務の場合にあつては、当該権利又は当該役務の種類)」は、契約した商品を特定させることを目的としている。
 「商品名」は原則として固有名詞とし、それのみでは商品のイメージが不明確なものについては併せて普通名詞も記載させることとされたい。「商標又は製造者名」としてはいずれか一方が記載されていればよい。「商標」とは登録商標のみならず、販売業者の製造、取扱い等に係る商品であることを表示するために使用する通称等も含むものである。なお、「商品名」と「商標」が同一である場合は「商標又は製造者名」を併せて記載する必要はない。商品における「種類」については、型式のない商品について当該商品を特定するために必要不可欠な事項があれば、これを記載することとする。
 権利又は役務において「種類」とは、当該権利又は役務が特定できる事項をいい、例えば「○×の会員権」、「英会話教室」等がこれに当たる。ただし、その内容が複雑な権利又は役務については、その属性にかんがみ記載可能なものをできるだけ詳細に記載し、書面上に記載しきれない場合には、「別紙による」旨を記載した上で、別途、役務の提供に関する事項を記載した書面を交付するよう指導されたい。この場合、当該書面は、法第4条又は第5条の書面との一体性が明らかとなるよう同時に交付させることとする。
(3) 書面の交付時期について
 法第4条に規定する申込みの内容を記載した書面及び法第5条第2項に規定する販売価格等を記載した書面は、「直ちに」交付しなければならないが、「直ちに」とは、当該申込み行為又は取引行為が完了した際その場で、という意味である。
 これに対して、法第5条第1項に規定する契約の内容を明らかにする書面は「遅滞なく」交付すればよいが、ここで「遅滞なく」とは、通常3〜4日以内と解される。
 
3 法第6条(禁止行為)関係
(1) 法第6条第1項の解釈について
(イ) 「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締
結について勧誘をするに際し」とは、販売業者又は役務提供事業者が購入者等と最初に接触してから契約を締結するまでの時間的経過においてという意味である。
 「申込みの撤回若しくは解除を妨げるため」とは主として法第9条に規定するクーリング・オフの行使を妨げる不当行為を念頭においており、消費者の正当な行為を妨害することをいう。
(ロ) 「当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは
役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」とは、購入者等が契約を締結する場合又は申込みの撤回若しくは解除をする場合の意思形成に対して重大な影響を及ぼす事項であって、当該契約に関連のある事項であれば足り、必ずしも契約の内容自体に限定するものではない。
 具体的に何がこれに該当するかについては、個別事例に即して契約の内容及び契約当事者の諸事情等を勘案しつつ判断すべきであるが、例えば次のような事例が該当するものと考えられる。
@ 勧誘時の例
「法律上の設置義務がある(消火器)。」
「アルミ鍋は有害である(ステンレス鍋)。」
「経済産業省が設置をするように決めた(ガス漏れ警報器)。」
A 契約の申込みの撤回又は解除を妨げるための例
「印鑑を既に彫り始めたので解除できない。」
「ミシンの梱包を開いているので解除できない。」
「(洋服の注文を行った場合に)布の裁断をしてしまったため、解除できない。」
(2) 法第6条第2項の解釈について
 「威迫」とは脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為をいい、「困惑させる」とは、字義のとおり、困り戸惑わせることをいう。具体的にはどのような行為が該当するかについては個々の事例について、行為が行われた状況等を総合的に考慮しつつ判断すべきであるが、次のような事例が該当するものと考えられる。
(イ) 契約を締結させるための例
@ 「買ってくれないと困る。」と声を荒げられて、誰もいないのでどうしてよいかわか
らなくなり、早く帰ってもらいたくて契約してしまった。
A ことさらに入墨を見せられ、こわくなって契約をしてしまった。
(ロ) 契約の申込みの撤回又は解除を妨げるための例
 クーリング・オフを申し出ると、業者から支払の催促の電話があり、「残金を支払わないと現住所に住めなくしてやる。」と言われ、不安になってクーリング・オフの行使を思いとどまった。
 
4 法第7条(指示)関係
 (1) 法第7条第1号の解釈について
本号は、販売業者又は役務提供事業者が行う民事上の債務不履行についての規定である。
(イ) 「売買契約若しくは役務提供契約の解除によつて生ずる債務」とは、販売業者又は役務
提供事業者の原状回復義務であり、受領済の金銭の返還義務等である。
(ロ) 「履行の拒否」は、契約相手方の請求に対して明示的に拒否する場合もあろうが、明示
的に拒否することはしないまでも、実態上「拒否」と認められる場合(契約の相手方の請求を聞こうとしない等)も含む。
(ハ) 「不当な遅延」については、解除がなされた時に直ちに本号違反状態となるものではな
く、返還すべき金銭の調達に要する合理的期間等社会通念上認められた猶予期間の間は、本号違反にはならない(ただし、この猶予期間は、客観的に判断されるものであって、販売業者又は役務提供事業者の独自の事情のみによって左右されるものではない。)。また、同時履行の抗弁権がある等販売業者又は役務提供事業者に正当事由がある場合はこれに該当しない。
(2) 法第7条第2号の解釈について
 「契約に関する事項であって、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」の解釈については、法第6条第1項と同意であるが、例えば、18ホールのゴルフ場の会員権を販売する際に会員が一万人もいることを告げない場合や資格講座受講の勧誘に際し、当該資格試験の受験に関し年齢、学歴等の受験資格に制限があるにもかかわらず故意にこれらを告げない場合等は本号に該当することが多いと考えられる。
(3) 省令第7条の解釈について
(イ) 第1号
 「迷惑を覚えさせるような仕方」とは、客観的にみて相手方が迷惑を覚えるような言動であれば良く、実際に迷惑と感じることは必要ではない。具体的には、正当な理由なく不適当な時間帯に(例えば午後9時から午前8時まで等)勧誘をすること、長時間にわたり勧誘をすること、執ように何度も勧誘をすること等はこれに該当することが多いと考えられる。
(ロ) 第2号
 「老人その他の者」には、老人、未成年者等が一般的には該当し得るが、判断力が不足している場合にのみ適用されることとなる。
(ハ) 第3号
 「その他の事項」とは、顧客の信用能力についての情報(持家の有無、勤続年数、収入等)が中心であるが、特にこれに限定するものではない。
(ニ) 第4号
 本号はキャッチセールスにおける勧誘の前段階を対象とした規定であるが、「公共の場所」とは、およそ公衆が利用できる場所全てを指すものであり、公園、公会堂のみならず劇場、映画館、飲食店等も含むものである。
(ホ) 第5号
 本号は、クーリング・オフを妨げるために消耗品を契約したその場で使用又は消費させることを規定したものである。
 
5 法第9条(契約の申込みの撤回等)関係
(1) 法第9条第1項各号は、クーリング・オフができなくなる場合を規定したものである。
(イ) @ 「第5条の書面を受領した日(その日前に第4条の書面を受領した場合にあつてはその書面を受領した日)」とは、クーリング・オフができる旨及びその方法について記載された書面(法第4条又は法第5条の書面)を受領した日のことである。したがって、販売業者又は役務提供事業者がこれらの書面を交付しなかった場合は、クーリング・オフの起算日は進行しないことになる(すなわち、クーリング・オフをする権利が消費者側に留保されていることになる)。
 また、これらの書面に重要な事項が記載されていない場合も、クーリングオフの起算日は進行しないと解される。特に、クーリング・オフができる旨が記載されていない等クーリング・オフに関する記載事項が満たされていない書面は、法第9条第1項にいう「第4条又は第5条の書面」とは認められない。
A しかしながら、法第9条第1項の政令で定める指定商品を販売するとき及び現金取引でその総額が3,000円未満のときに、クーリング・オフができない旨が記載されていないことをもって、クーリング・オフが可能となるわけではない。
(ロ) @ 法第9条第1項第2号の「使用又は消費」について
 当該商品がどのような状態のときに「使用又は消費」したことになるかは、当該商品ごとに個別具体的な状態により判断せざるを得ないが、一般的には消費者自らの行為により当該商品の価値の回復が困難になったと認められる状態になった場合である。 具体的には、当該商品自身を明らかに「使用又は消費」していれば当然であるが、当該商品自身を「使用又は消費」していない場合であっても、例えば正味量表記商品のように密封されていること自体に意味のある商品を開封した場合等は「使用又は消費」したことになる。したがって、一般的には単に商品の包装を開いただけでは使用又は消費に当たらない。
 また、契約を締結した際に販売員が当該商品を「使用又は消費」させた場合は、消費者自らの意思による「使用又は消費」ではなく、当然クーリング・オフは可能である(このような場合は禁止行為(省令第7条第5号)に該当すると考えられる。)
 なお、契約締結前に販売員が当該商品を「使用又は消費」させる場合は単なる試用と考えられる。
A 「使用又は消費」によりクーリング・オフができなくなる商品の範囲について
 「使用又は消費」によりクーリング・オフができなくなる商品の範囲は、商品ごとに個々具体的に判断せざるを得ないが、一般的には当該商品について通常販売されている商品の最小単位が基準となる。
 具体的には、通常販売されている最小単位の商品がいくつかセットで販売される場合において、そのうちの一部を使用又は消費したときは、当該「使用又は消費」に係る最小単位部分についてはクーリングオフができなくなるが、それ以外の部分についてはクーリングオフを行うことができる。
(ハ) 法第9条第1項第3号は、クーリング・オフができなくなる場合の一つとして、現金取引であってその取引額が一定の金額に満たない場合を定めたものである。
 「当該売買契約に係る指定商品若しくは指定権利の代金又は当該役務提供契約に係る指定役務の対価の総額」とは、例えば、指定商品と非指定商品を同時に購入した場合であっても、指定商品の合計金額のみを政令で定める金額(3,000円)と比べることになることを明らかにしたものである。
(2) 法第9条第5項の「当該権利の行使により得られた利益」とは、権利の行使により役務の提供を受けた場合における申込者等の不当利得を表現したものであり、例えばゴルフ会員権におけるメンバー料金とビジター料金との差額はこれに該当する。すなわち、その権利を有する者が当該権利を行使して役務の提供を受けたことにより、当該権利を有していない者が同種の役務の提供を受ける場合と比して得られる利益である。
 
6 法第10条(損害賠償等の額の制限)関係
(1) 本条の「商品若しくは権利の販売価格」及び「役務の対価」とは、代金の支払い方法が分
割の場合は、契約に基づき購入者等が支払う金銭の合計額のことである。
(2) 法第10条第1項第1号の「商品の通常の使用料又は権利の行使により通常得られる利 益」について
 「商品の通常の使用料の額又は当該権利の行使により通常得られる利益に相当する額」とは、業界の平均が基準となる趣旨である。
 当該商品について、賃貸借が営業として行われていれば、その賃貸料が一応の目安となろうが、そのような営業が行われていない場合は、当該商品の減価償却費、マージン、金利等を考慮した合理的な額でなければならない。
 具体的な使用料については、商品によっては当該商品を販売する業界において、標準的な使用料率が算定されているものもあるので、それを参考とされたい。業界において算定されていない場合は、当該販売業者が請求する損害賠償等の額の積算根拠を確認し、その妥当性を個別に判断する必要がある。また、権利については5(2) を参照のこと。
(3) 法第10条第1項第3号について
 「提供された当該役務の対価に相当する額」とは、契約の解除の時点までに提供された役務の対価であるが、この算定に際しては、役務によりその妥当性を個別に判断する必要がある。
(4) 法第10条第1項第4号について
 「契約の締結のために通常要する費用」としては、書面作成費、印紙税等であり、また「契約の履行のために通常要する費用」としては、代金取立費用、催告費用等であるが、このために現実に要した費用ではなく、業界の平均費用が標準となり、当該契約のみに特別に費用をかけた場合でも、それをそのまま請求することは出来ない。
 なお、役務提供事業者がその資材の加工を既に始めている場合は、役務提供契約に係る労働の提供が開始されたと考えられるため、「役務の提供開始後」として第3号に該当することとなる。
(5) 合意に基づく解除の場合の法第10条第1項の適用について
 本項は、約定解約の場合についての規定であり、合意により契約の解除がなされた場合は、本項は適用されないが、このような場合であっても本項に準じて取り扱うよう指導されたい。
 
第3節(通信販売)関係
1 法第11条(広告の表示)関係
(1) 法第11条の適用を受ける広告(通信販売広告)について
 法第11条の適用を受ける広告(通信販売広告)は、販売業者又は役務提供事業者が通信手段により申込みを受けて商品の販売等を行うことを意図していると認められる広告である。
 したがって、広告に通信販売を行う旨明確に表示されている場合が通信販売広告に該当するほか、例えば、送料、口座番号等の表示や店頭で商品購入を行うことが不可能な商品の販売広告等も該当することとなる。
 また、広告の方法の如何を問わない。したがって、新聞、雑誌に掲載される広告のみならず、ダイレクトメール、テレビ放映、折り込みちらし、インターネット上のホームページ、パソコン通信、電子メール等において表示される広告も含まれる。       
(2) 法第11条第4号の返品に関する事項と省令第8条第5号の瑕疵担保責任に関する事項 との関係及びその表示例について
 法第11条第4号は、商品に瑕疵がなく、販売業者に契約違反のない状態において、返品を認めるか否かを表示すべき旨の規定であり、一方、省令第8条第5号は、商品に瑕疵がある場合の販売業者の瑕疵担保責任について特約する場合にその旨表示すべき旨の規定である。
 前者は絶対的表示事項であり、後者は民商法一般原則によらず特約する場合のみ表示することを義務づけた表示事項である。
 したがって、これらの事項について表示する場合は、当該表示が法第11条第4号(いわゆる返品特約)についての表示であるか、省令第8条第5号(瑕疵担保責任)についての表示であるか、あるいは双方を同時に表示したものであるかを明確にする必要がある。
 例えば、法第11条第4号のみを表示する場合(この場合は、販売業者の瑕疵担保責任は民商法一般原則によることになる。)は、「商品に欠陥がない場合であっても、○日間に限り返品に応ずる」というように表示することとし、返品特約がない場合においては、「商品に欠陥がある場合を除き、返品に応じない」旨を表示することになる。法第11条第4号及び省令第8条第5号の双方を表示する場合は、「商品に欠陥がある場合に責任を負うとともに、商品に欠陥がない場合であっても○日間に限り返品に応ずる。」、「商品に欠陥がある場合は責任を負うが、商品に欠陥がない場合は返品に応じない」等の表示がなされることとなる。「○日間に限り返品に応ずる」、「返品に応じない」等の表示は法第11条第4号の表示であるか、省令第8条第5号の表示であるか不明確であるため、明確な表示を行うよう指導されたい。(仮にこのような表示がなされている場合は、特定商取引法の趣旨からみた広告内容の解釈としては、法第11条第4号の表示と解され、販売業者の瑕疵担保責任については民商法一般原則によるとの表示と解されるものと考えられる。)
 なお、瑕疵のない商品の返品を認める場合、その送料の負担の有無をあわせて表示させることが必要である。
(3) 返品の特約については、法第11条第4号で、その特約がない場合にはその旨を広告に明示することが求められていることから、仮に返品の特約に関する事項についての記載が一切ない場合で、消費者が返品可能と信じていたような場合には、特定商取引法の趣旨を踏まえ、事業者は、その消費者からの返品の要請に適切に応ずるべきものと考えられる。
(4) 省令第8条第2号に定める「電子情報処理組織を使用する方法」及び「通信販売に関する業務の責任者」について
  本号にいう「電子情報処理組織を使用する方法」とは、インターネット上のホームページ、パソコン通信、電子メール等を利用した広告を指すものである。 
  また、「責任者」とは、通信販売に関する業務の担当役員や担当部長等実務を担当する者 の中での責任者を指すものであり、必ずしも代表権を有さなくてもよい。    
(5) 省令第8条第1号及び第2号に定める事項の記載方法について
  第1号及び第2号に定める事項は、販売業者又は役務提供事業者の属性に関するものであ ることから、広告中には、消費者が容易に認識することができるような文字の大きさ・方法 をもって、容易に認識することができるような場所に記載しなければならない。     
  また、インターネット上のホームページなどパソコン画面上等の広告では、本法に定める 広告事項のすべてを確認するには画面のスクロールや画面の切替えを要さずにすむよう記載 することが望ましいが、特に第1号及び第2号に定める事項については、画面上に広告の冒 頭部分を表示したときに認識することができるように記載すべきである。ただし、やむを得 ず、冒頭部分への記載を行うことができないときには、冒頭部分から容易に記載箇所への到 達が可能となるような方法又は契約の申込みのための画面に到達するにはこれらの事項を記 載した画面の経由を要するような方法をあらかじめ講ずるべきである。         
(6) 省令第8条第4号(購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭)の表示例について
 販売価格又は役務の対価及び送料(法第11条第1号)のほか、省令第8条第4号に定める購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭としては、工事費、組立費、設置費、梱包料等が考えられるが、これらの購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭があるときの表示については次の具体例を参考とされたい。
 (表示例)
  (例1) 販 売 価 格  ○○○円  
        送     料   ○○円
        工  事  費  ○○○円
        梱  包  料  ○○○円
  (例2) 販 売 価 格  ○○○円(送料を含む)
        工事費・梱包料  ○○○円
(7) 省令第9条第1号(送料の金額表示)の表示方法について
 この規定は、送料の表示について「送料実費」等の表示ではなく、金額表示を行うことにより購入者の負担する費用を明確化しようとするものである。
 しかし、広告の態様は、千差万別でそのスペースは大小様々であり、一方、送料は地域別、重量別に細かく定められているのが通例であるので、すべての場合を広告に表示させることは、実態にそぐわない面がある。
 したがって、購入者が自ら負担すべき送料についておよその目途をたて得る表示として、例えば、@最高送料と最低送料A平均送料B送料の数例等の表示でもよい。
 (表示例)
  (例1) 最低送料と最高送料の表示の場合
        送料○○円(東京)〜○○円(沖縄)
  (例2) 平均送料の表示
        送料○○円(約○%の範囲内で地域により異なります。)
  (例3) 数例の表示の場合
        送料○○円(東 京)
          ○○円(大 阪)
          ○○円(鹿児島)
 なお、上記の例はあくまで広告スペースが不足している場合の表示例であり、広告のスペースに余裕がある場合はできる限り詳細に記載されるよう指導されたい。また、広告スペースが不足している場合においても、上記のような表示に加えて、請求により、書面又は電磁的方法により、遅滞なく、送料に関する詳細な金額等の情報を提供するとの取扱いを行うことが望ましい。
 
2 法第12条(誇大広告等の禁止)関係
(1) 「著しく」の解釈について
 具体的に何が「著しく」に該当するかの判断は、個々の広告について判断されるべきであるが、例えば「一般消費者が広告に書いてあることと事実との相違を知っていれば、当該契約に誘い込まれることはない」等の場合は、該当すると考えられる。
(2) 省令第11条第1号の「商品の性能、品質若しくは効能」、「役務の内容若しくは効果」 及び「権利の内容若しくはその権利に係る役務の効果」について
 「商品の性能、品質」とは、商品の性質又は能力のことであり、「権利又は役務の内容」とは、権利又は役務の実質のことであり、どちらもそのもの自身が有する特質である。例えばワープロの処理能力、健康食品の成分・賞味期限、エステティックサロンにおける具体的施術等がこれに該当する。
 一方、「商品の効能」又は「役務の効果」とは、商品を使用すること又は役務の提供を受けること等により得られるききめのことである。例えば近視眼矯正器による視力回復の程度、ダイエット食品による体重減少の程度、家庭教師による成績の向上等はこれに該当する。
(3) 省令第11条第2号の「国、地方公共団体、通信販売協会その他著名な法人その他の団体又は著名な個人の関与」とは、法令上の権限によるものであるかどうかを問わず、当該商品等への国、地方公共団体等のかかわりのことであり、例えば「農林水産省認定」、「経済産業省推薦」、「東京都公認」等の表示はこれに該当する。また、商品・権利・役務についての認定等(例えば「この製品は、経済産業省認定」等の表示)のほか、事業者についての認定等(例えば、「当社は、経済産業省認定事業者」の表示、オンライントラストマークの不正表示等)、事業についての認定等(例えば「経済産業省認定事業」等の表示)が含まれる。
 
3 法第13条(通信販売等における承諾等の通知)関係
(1) 法第13条の「遅滞なく」の解釈について
 本条において「遅滞なく」とは、取引実態から一週間程度と考えられる。したがって、広告上あらかじめ「代金受領後二週間でお届けします。」と表示し、その通り履行したとしても、「遅滞なく」商品を送付したこととはならない。
 また、仮に広告上「代金受領後一週間以内にお届けします。」と表示した場合であってもそれはあくまで表示に過ぎず、実際に一週間以内に送付しなければ法第13条の規定に従ったものとは考えられない。
(2) 広告中に表示されている「商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期」
と本条の通知に記載された「商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期」が異なる場合の法律効果について
 通信販売における法律関係は、例えば商品の売買であれば、通常、広告は売買契約の申込みの誘引、郵便等による購入の申込みは売買契約の申込み、販売業者の商品の送付等は売買契約の承諾と構成される。
 この場合、申込者は明らかに広告に表示されている販売条件(商品の引渡時期を含む。)により当該商品を購入することを内容とする申込を行っているので、販売業者がその販売条件で申込に応ずる旨承諾したときに両方の意思は合致し契約が成立する。
 したがって、本条に基づく承諾の有無等に関する通知において、商品の引渡時期が広告に表示した時期と異なっていれば、両者間に意思の合致がなされていないことになるので、新たな申込みを行ったもの(民法第528条)とみなすことができ、当該商品を購入するかどうかの判断は申込者に委ねられることとなる。
 その場合、申込者すなわち購入者が当該通知に対し、特に反対の意思表示を行わない場合には、通常は購入者はその新たな申込みに対し、黙示の承諾を行ったものとみなされる。
 なお、民事上の効果は上記のとおりであるが、広告を行った時点において広告中に表示されている「商品の引渡時期」に商品を引き渡すことが客観的に不可能であるにもかかわらず、その不可能な時期を表示した場合は、法第12条違反となる。
(3) 商品の引渡し等の前にクレジットカードにより支払代金の一部又は全部が決済される場合
の法第13条の適用について
 法第13条の趣旨は、前払式通信販売において購入者が商品受領前に代金の全部又は一部を支払ってしまうため不安定な立場に置かれることを保護するものである。したがって、クレジットカードが利用される場合においては、本条の「商品の引渡しに先立って代金の全部又は一部を受領することとする通信販売をする場合において」「その代金の全部又は一部を受領したときは」とあるのは「クレジットカードの利用による立替払いに伴う購入者の銀行口座からの金銭の引落しが商品の引渡前に行われることが明らかな場合において」「クレジット会社が購入者の銀行口座から金銭を引き落としたときは」と解して本条を運用されたい。
 
 
 
第4節(電話勧誘販売)関係
1 法第16条(氏名等の明示)関係
(1) 「電話勧誘販売をしようとするとき」とは、勧誘行為を始めるに先立ってという意味であり、通常は電話をかけて相手が出たら開口一番で告げなければならない。したがって、知人を装って長々と世間話をしたりアンケートと称して会話に引き込んだ後に売買契約等の勧誘を行うことは本条の違反となる。
(2) 「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称」について
 第2節(訪問販売)関係1を参照されたい。なお、電話勧誘販売においては、販売業者等が実際の勧誘を代行業者等他の者に委託する例が少なくないが、この場合に本条に基づき告げなければならないのは、販売業者等の氏名又は名称であって、代行業者の氏名又は名称ではない。
(3) 「勧誘を行う者の氏名」とは、実際に電話による勧誘行為を行う者の氏名である。
(4) 「勧誘をするためのものであることを告げ」について、具体的な告知の方法としては、以下のような例が挙げられる。
「本日は弊社の新型パソコンについてのご購入をお勧めするためお電話をさせて頂きました。」
「行政書士講座の受講について勧誘のお電話をさせて頂きました。」
 
2 法第17条(契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘の禁止)関係
 「契約を締結しない旨の意思を表示」とは、販売業者等からの勧誘に対し、消費者が「いりません」「関心がありません」「結構です」など明示的に意思表示した場合に加え、黙示的に意思表示した場合も含むものである。また、具体的に勧誘されている商品について意思表示をする場合のほか、「あなたとは一切取引を行うつもりはありません」という意思表示もあり得る。この場合には商品の種類の如何を問わず意思表示をしているので、その者に対する勧誘は禁止される。
 「勧誘をしてはならない」とは、その電話において引き続き勧誘することはもちろん、その後改めて電話をかけて勧誘をすることも禁止されるという意味である。
 
3 法第18条、第19条(書面の交付)関係
(1) 書面の交付義務者について
  第2節(訪問販売)関係2(1) を参照されたい。
(2) 書面の記載事項について
(イ) 法第18条第2号中の「代金支払方法」については、第2節(訪問販売)関係2(2)(イ)を参照されたい。
(ロ) 法第18条第3号の「商品の引渡時期」及び「役務の提供時期」については、第2節(訪問販売)関係2(2)(ロ) を参照されたい。
 また、訪問販売と同様、記載事項が書面に記載しきれない場合は、「別紙による」旨を記載した上で、法第18条及び第19条の書面との一体性が明らかとなるよう当該別紙を同時に交付することとする。また、「権利の移転時期」については、実質的に権利の行使が可能となる時期を記載しなければならない。
(ハ) 法第18条第4号のいわゆるクーリング・オフに関する事項については、省令第20条に規定するところにより記載することとなる。また、法第24条第1項の政令で定める指定商品を販売する場合及び現金取引でその総額が3,000円未満のときにクーリング・オフができないこととする場合は、その旨記載する義務が課されていることに留意されたい。
(ニ) 省令第17条第4号の「商品名及び商品の商標又は製造者名」及び第5号の「商品の型式又は種類(権利又は役務の場合にあつては、当該権利又は当該役務の種類)」については、第2節(訪問販売)関係2(2)(ニ)を参照されたい。
 なお、法律上、法定記載事項の記載する位置については指定してないが、「書面の内容を十分に読むべき旨」及び「クーリング・オフに関する事項」については、書面の最初の頁に記載することが望ましい。
(3) 書面の交付時期について
 法第18条に規定する申込み内容を記載した書面及び法第19条第1項に規定する契約内容を明らかにする書面は、「遅滞なく」交付しなければならないが、「遅滞なく」とは通常3〜4日以内と解される。
 訪問販売にあっては、法第4条に規定する書面の交付時期は「直ちに」であるところ、電話勧誘販売については隔地者間取引であるためその場で「直ちに」交付することは実体上不可能であることから、早急にとの趣旨で「遅滞なく」としたものである。
 なお、書面の交付については、申込みや契約の内容を消費者に確認させることが目的であるため、電話勧誘に先立ってダイレクトメール等を送付する場合において、ダイレクトメール等に販売価格等必要記載事項が記載されているからといって法第18条又は第19条の書面を交付したことにはならない。
 
4 法第20条(承諾の通知)関係
(1) 「遅滞なく」の解釈について
 第3節(通信販売)関係3(1) を参照されたい。
(2) 法第18条又は第19条の書面と本条の書面との関係について
 本条の通知書面は、法第13条(前払式通信販売の承諾通知)と同旨であり、商品の引渡しに先立って代金を受領する形の電話勧誘販売において、代金を支払って申込をした者に対しその申込みに対する諾否の旨や受領した金銭の額等を通知するものである。これに対し、法第18条又は第19条の書面は販売業者等が受けた申込みあるいは締結した契約の内容、取引条件等について後日トラブルが生じないよう書面で明らかにするものであり、互いにその趣旨を異にするが、双方の記載事項を満たしていれば本条の書面と法第18条又は第19条の書面とを同一の書面としてもよい。ただし、その場合書面の交付時期は、法第18条又は第19条の書面交付時期に従い、3〜4日以内となることに留意されたい。
(3) 商品の引渡し等の前にクレジットカードにより支払代金の一部又は全部が決済される場合
の法第20条の適用について
 第3節(通信販売)関係3(3) を参照されたい。
 
5 法第21条(禁止行為)関係
(1) 法第21条第1項の解釈について
(イ) 「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約
の締結について勧誘をするに際し」とは、訪問販売と同様、販売業者又は役務提供事業者が購入者等に対し最初に電話勧誘を行ってから契約を締結するまでの時間的経過においてという意味である。
 「申込みの撤回若しくは解除を妨げるため」とは主として法第24条に規定するクーリング・オフの行使を妨げる不当行為を念頭においており、消費者の正当な行為を妨害することをいう。
(ロ) 「当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、電話勧誘顧客又は購入者
若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」の解釈については、第2節(訪問販売)関係3(1)(ロ)を参照されたい。
(ハ) 「不実のこと」については、例えば次のような事例が該当するものと考えられる。
@勧誘時の例
「(国家資格になる予定がないにもかかわらず)当協会が実施している資格制度はまもなく国家資格になる。」
「(広く市販されているにもかかわらず)この商品は当店でしか扱っていない。」
「(その効果がないにもかからず)この防虫剤は防湿の効果もある。」
A契約の申込みの撤回又は解除を妨げるための例
「あなたの名前をコンピュータに登録しているので申込みの撤回はできない。」
「(物の取り付け・設置の場合)もう材料をそろえてしまったので解除できない。」
「クーリングオフ期間は4日であり、既に4日が過ぎているので解除できない。」
(2) 法第21条第2項の解釈について
 「威迫」及び「困惑させ」の解釈については、第2節(訪問販売)関係3(2) を参照されたい。
 具体例としては、例えば次のような事例が該当するものと考えられる。
@契約を締結させるための例
「申込むと言うまで毎日職場に電話をかけてやるぞ。」
「申込みをしないなら上司に君がいい加減な奴だと言いつけるぞ。」
「(実際には契約が成立していないにもかかわらず、)もう契約は成立した。金を払わ なければ法的手段に訴えるぞ。」 
A契約の申込みの撤回又は解除を妨げるための例
「この契約を解除すると後でどうなるかわかってるんだろうな。」
 
6 法第22条(指示)関係
(1) 法第22条第1号の解釈について
 第2節(訪問販売)関係4(1) を参照されたい。
(2) 法第22条第2号「故意に事実を告げない」の解釈について
第2節(訪問販売)関係4(2) を参照されたい。
(3) 省令第23条の解釈について
(イ) 第1号
 「迷惑を覚えさせるような仕方」については、第2節(訪問販売)関係4(3)(イ)を参照されたい。
 なお、深夜早朝や長時間の電話勧誘及び職場への電話勧誘については、相手方がそれを承諾しているケース等を除いて、「迷惑を覚えさせるような仕方での勧誘」に該当し得る。
(ロ) 第2号及び第3号
 第2号中の「老人その他の者」、第3号中の「その他の事項」は、それぞれ第2節(訪問販売)関係4(3)(ロ)及び(ハ) を参照されたい。
 
7 法第24条(申込みの撤回等)関係
(1) 法第24条第1項各号は、クーリング・オフができなくなる場合を規定したものである。
 (イ) @ 「第19条の書面を受領した日(その日前に第18条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)」とは、クーリング・オフができる旨及びその方法について記載された書面(法第18条又は第19条の書面)を受領した日のことである。したがって、販売業者又は役務提供事業者がこれらの書面を交付しなかった場合、訪問販売と同様、クーリング・オフの起算点は進行しないこととなる。
 また、これらの書面に重要な事項が記載されていない場合も、クーリング・オフの起算日は進行しないと解される。特に、クーリング・オフができる旨が記載されていない等クーリング・オフに関する記載事項が満たされていない書面は、法第24条第1項にいう「第18条又は第19条の書面」とは認められない。
 しかしながら、法第24条第1項の政令で定める指定商品を販売するとき及び現金取引でその総額が3,000円未満のときに、クーリング・オフができない旨が記載されていないことをもって、クーリング・オフが可能となるわけではない。
A「書面を受領した日」の立証責任について
 クーリング・オフは、本法により消費者に認められた権利であり、法律上の一定の要件に該当する場合についてその効力が消滅するものである。事業者側がその要件に該当することをもって消費者からのクーリング・オフ権の消滅を主張する場合には、その立証責任は事業者等が負う。したがって、書面を受領した日から8日間が経過したことの立証、すなわち書面を受領した日の立証は、事業者等が行わなければならない。
 電話勧誘販売においては、書面が郵送等の形で交付される場合が多いことから、書面をいつ受領したかについて争いが生じることも予想される。書面の交付方法について本法では書留や配達証明を用いるべきとまでは定めておらず、事業者の自主的な対応に委ねられているところであるが、こうした場合に備え、事業者側としては、書面の受領日が立証できる方法(例えば書留や配達証明等)を用いることが望ましい。
 なお、書面の交付及び受領についての争いを避けるとの趣旨から、書面が在中している外袋に「重要書類在中」と赤字で記載するなど、消費者にわかりやすい方法で交付するよう販売業者等を指導されたい。
(ロ) 法第24条第1項第2号の「使用又は消費」によりクーリング・オフができなくなる商品の範囲については、第2節(訪問販売)関係5(1)(ロ)を参照されたい。
(ハ) 法第24条第3号は、クーリング・オフができなくなる場合の一つとして、現金取引であってその取引額が一定の金額に満たない場合を定めたものである。内容については、第2節(訪問販売)関係5(1)(ハ)を参照されたい。
(2) 法第24条第5項の「当該権利の行使により得られた利益」については、第2節(訪問販売)関係5(2) を参照されたい。
 
8 法第25条(損害賠償等の額の制限)関係
  第2節(訪問販売)関係6を参照されたい。
 
第5節(雑則)関係
1 法第26条(適用除外)関係
(1) 法第26条第1項第1号について
 「営業のために若しくは営業として」とは、本法においては商行為に限定するものではない。通常、営利を目的とした事業・職務の用に供するために購入し又は役務の提供を受ける場合は本号に該当する。
(2) 法第26条第2項第1号について
 本号は、販売業者等が自らの意思に基づき住居を訪問して販売を行うのではなく、消費者の「請求」に応じて行うその住居における販売等を適用除外とするものである。
 このような場合は、例えば商品の売買にあたっては、
@購入者側に訪問販売の方法によって商品を購入する意思があらかじめあること
A購入者と販売業者との間に取引関係があること
が通例であるため、本法の趣旨に照らして本法を適用する必要がないためである(ただし法第3条は適用される。)。
 「請求」の程度は、「契約の申込み」又は「契約の締結」を明確に表示した場合、すなわち「○○を購入するから来訪されたい」等の明確に意思表示があった場合に限らず、請求の趣旨が、例えば、「工事箇所の下見、工事の見積もりをしてほしいので来訪されたい」「○○のカタログを持参されたい」等取引行為を行いたい意思があると認められる程度であればよい。
 また、例えば工事の場合にあっては、当初の見積もり等のための来訪が要請されていない場合であっても、2回目以降の来訪が要請されたものであれば同様に適用除外となる。
 しかし、商品等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に、販売業者等より訪問して説明をしたい旨の申出があり、これを消費者が承諾した場合は、消費者から「請求」を行ったとは言えないため、本号には該当しない。
 また、販売業者等の方から電話をかけ、事前にアポイントメントを取って訪問する場合も同様に本号には該当しない。
(3) 法第26条第2項第2号について
(イ) 政令第8条第2号及び第3号の「取引」について
 「取引」には、指定商品の販売等本法の規制を受ける取引のみに限られず、業として行うものであれば例えば非指定商品の販売も含まれる。
 政令第8条第2号及び第3号の適用にあたって基礎となる取引の実績は、これらの態様であれば過去の取引実績により信頼関係が形成され、問題を惹き起こすことはないと考えられるためであるから、原則として、販売業者等と購入者等の双方に当該取引についての認識があることが必要である。したがって、仮に購入者が過去に当該販売業者の店頭において低廉な商品を購入した実績があるとしても両者にその認識がないのが通常であろうから、実際には、ある程度高額な商品を取引した場合、割賦販売により取引した場合、購入者の住居に商品を配達した場合等が該当することとなる。
 また、過去に契約が締結された事実があってもクーリング・オフがなされたり、紛争となっていたものについては、過去の取引実績とは認められない。
 なお、取引実績の有無については、争いが生じた場合、販売業者又は役務提供事業者が立証する必要がある。
(ロ) 政令第8条第2号及び第3号の「当該販売又は役務の提供の事業に関する取引」につい

 当該販売業者又は役務提供事業者が業として営む販売又は役務の提供の事業に関する取引のことであり、販売業者又は役務提供事業者が業として営む事業に関係のない取引、例えば、自動車販売店が過去に行った不動産取引は本号の取引とは認められない。
(ハ)政令第8条第2号及び第3号の「その住居を訪問して」について
  政令第8条第2号及び第3号が適用されるのは「その住居を訪問して行う指定商品、指 定権利の販売又は指定役務の提供」であり、いわゆるキャッチセールス、アポイントメン トセールス等「その住居を訪問」せずに行う販売等は対象とならない。        
(ニ) 政令第8条第4号の「事業所に所属する者」及び「事業所の管理者」について
 「事業所に所属する者」とは、常時従業者のみならず、使用者、臨時従業者等当該事業所に所属する者のすべてを含む。また「事業所の管理者」とは、当該事業所で事業を営む企業なり団体なりの庶務担当責任者等当該企業又は団体において当該事業所の管理権限を有する者であり、例えば共同ビルの管理者等は含まれない。
 なお、この職域販売が本法の適用除外となる要件は、事業所の管理者の「書面による」承認が必要であることに留意されたい。
(4) 法第26条第3項第1号について
 本号は、販売業者等が自らの意思に基づき電話をかけて勧誘を行うのではなく、消費者が販売業者等に対して契約締結のために電話をかけるよう「請求」したことに応じて、電話をかけて電話勧誘販売を行う場合を適用除外とするものである。(ただし、法第16条、第17条及び第20条は適用される。)
 ここで、訪問販売における「住居への来訪」の場合と異なり、電話の場合は単に問合せ等の目的で消費者側も気軽に販売業者等からの電話を請求しがちである。このため、「請求」の程度は、「契約の申込み」又は「契約の締結」を明確に表示した場合、すなわち「○○を購入したいのだが、詳しく話を聞きたいので電話されたい」等の明確な意思表示があった場合、あるいは、当該事業者との平常の取引関係等から客観的にみて購入等の意思が明らかである場合に限られる。したがって、消費者が商品の問合せを目的として事業者からの電話を請求した場合については、「申込みをし又は契約を締結するため」に「請求」をしたことには該当しない。
 なお、括弧書にいうところの「電話勧誘行為又は政令で定める行為によりこれを請求した場合を除く」とは、販売業者等の電話勧誘行為や欺もう的な方法により、消費者が事業者等に対し申込み又は契約締結のための電話を請求させられたケースについては適用除外の対象としない旨を規定したものであり、「政令で定める行為」については政令第9条で、販売業者等が本来販売しようとする商品についての販売意図を明らかにせずに消費者に電話をかけることを請求させる行為を規定している。
(5) 法第26条第3項第2号について
 政令10条の解釈については、(3) (イ)及び(ロ)を参照されたい。
 
2 その他
 政令別表第3第2号に定める「物品の貸与」及び第8号に定める「物品の取付け又は設置」には、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)に規定する「電気通信役務」並びに放送法(昭和25年法律第132号)に規定する「放送」、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)に規定する「有線ラジオ放送」及び有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)に規定する「有線テレビジョン放送」の役務として行われる物品の貸与並びに取付け及び設置は含まない。
 
第3章(連鎖販売取引)関係
1 法第33条(定義)関係
(1) 法第33条第1項の解釈について
(イ) 「連鎖販売業」について
 連鎖販売業の形態は、物品及び権利の販売に係るものと役務の提供に係るものに、大別される。
@ 「物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。)の販売(そのあつせん
を含む。)の事業であって、商品の再販売、受託販売又は販売のあつせんをする者を特定利益を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担を伴うその商品の販売又はそのあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。)をするもの」について
 「再販売」とは、法で「販売の相手方が商品を買い受けて販売すること」と定義されている。したがって、商品を買い受けて消費するのみの者は単なる購入者であり「再販売をする者」に該当しない。
 「受託販売」とは、法で「販売の委託を受けて商品を販売すること」と定義されている。取次ぎ、代理等の如何を問わず、商品の所有者等から販売の委託を受けて行う販売(販売の委託を受けて更に販売の再委託をすることを含む。)は「受託販売」に該当する。
 「販売のあつせん」とは、販売の相手方を見つけ、販売の仲立ちをすることをいう。勧誘など、販売のための何らかの補助を行うことが必要である。
A 「有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、同種役務の提供
又はその役務の提供のあつせんをする者を特定利益を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担を伴う同種役務の提供又はその役務の提供のあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。)をするもの」について
 「同種役務の提供」とは、法で「その役務と同一の種類の役務の提供をすること」と定義されている。
 「種類」とは、一般人がいかなる役務なのかを認識できる程度のものであり、例えば「ダンスのレッスン」、「絵画のレンタル」等がこれにあたる。このレベルにおいて「有償で行う役務の提供の事業」を行う者が提供する役務と同一の役務を提供する者であれば、「同種役務の提供をする者」に該当する。
 「その役務の提供のあつせん」とは、「有償で行う役務の提供の事業」を行う者がする役務の提供の相手方を見つけ、提供の仲立ちをすることをいう。
 なお、連鎖販売業に該当しない場合であっても、営業所等以外の場所において指定商品、指定権利の販売又は指定役務の提供を業として行っている場合は、訪問販売に関する規定が適用されることに留意されたい。会員の自宅で販売がなされる場合、当該会員を組織内で「代理店」等と呼んでいるようなケースにおいても、実際上、当該自宅が「営業所等」の実態を備えていない場合には、訪問販売に係る規定が適用される。第2章第1節(定義)関係1(1)を参照されたい。
(ロ) 「特定利益」について
 「特定利益」とは、再販売等を行う者を勧誘する際の誘引となる利益であり、法は「その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。」と定義し、省令第24条において、特定利益の要件を規定している。
 「商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者」とは、組織の他の加盟者のことであるが、現に加盟している者である必要はなく、加盟しようとする者を含むものである。
 例えば「あなたが勧誘して組織に加入する人の提供する取引料の○○%があなたのものになる。」と勧誘する場合は省令第24条第1号に該当し、「あなたが勧誘して組織に加入する人が購入する商品の代金(提供を受ける役務の対価)の○○%があなたのものになる。」と勧誘する場合は同条第2号に該当し、「あなたが勧誘して組織に加入する人があれば統括者から一定の金銭がもらえる。」と勧誘する場合は同条第3号に該当する。これらの同条に規定する利益は、いずれも組織の外部の者ではなく、組織の内部の者(組織に加入することとなる者を含む。)の提供する金品を源泉とするものであり、組織の外部の者(一般消費者)への商品販売による利益(いわゆる小売差益)は含まれない。
(ハ) 「特定負担」について
 特定負担とは、連鎖販売取引に伴う負担であり、再販売等を行う者が負うあらゆる金銭的な負担が含まれる。
 ここで、一定額以上の売上げを達成すること、他の者をリクルートすること、研修への参加等それ自体は通常金銭的な負担ではないため特定負担には該当しないが、再販売等をするために必要な物品(「ビジネス・ガイド」、「スターター・キット」などと呼ばれる場合もある。)を購入する場合や再販売等をするための商品を購入する場合であれば、それらの購入代金は特定負担に該当するほか、入会金、保証金、登録料、研修参加費用等の金銭負担が必要であれば、それらの費用は「取引料」であり、特定負担に該当する。
 また、当該販売組織に入会する時点で何ら金銭的負担が求められていない場合であっても、組織に入会後実際に商売を始めるために別途商品購入等何らかの金銭的負担をすることが前提となった契約である場合には、その負担が特定負担に該当する(したがって、入会契約の時点で法第37条第2項の書面、その契約を締結するまでに同条第1項の書面をそれぞれ交付しなければならない。)。入会契約書面上で「負担は一切ありません。」や「商品購入はあくまで参加者の自由です。」と記載していたとしても、取引の実質をもって判断される。
 再販売等を行わない単なる消費者(いわゆる愛用者)としてだけの契約条件で組織に参加する場合は、参加する時点における入会金の支払い等は連鎖販売取引に該当しないが、例えば、半年程度経った後「そろそろ販売活動を始めてみないか。」と言われ、商売をするために商品購入をする場合には、その商品購入が自己消費のためのものか再販売等のためのものかを問わず特定負担となり、その時点での取引が商品購入という特定負担を伴う連鎖販売取引となる。
  (ニ) 「取引条件の変更」について
@ 「取引条件の変更」とは、商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんに係る取引についての条件の変更であり、商品の販売価格、役務の提供価格等の条件の変更、特定利益の授受についての条件の変更等のことである。また、販売ノルマを新たに課すような場合も「取引条件の変更」に該当する。
 連鎖販売取引を行う組織は、それぞれ資格の異なる多段階の加盟員によって構成されていることが多く、販売実績等の条件をクリアする上位のランクの者は、下位のランクの者と比べて、商品の購入条件、特定利益の収受等において有利な異なる条件となっている。このような下位のランクから上位のランクへの昇進は、一般的には、法の「取引条件の変更」に該当する。
A なお、入会の際に、昇進の条件や、昇進後の商品の販売価格、販売ノルマ、特定利益の授受についての条件などの取引条件の詳細が契約書に明記されているとともに、十分に内容が説明されて、当該個人が昇進後の条件について入会の際に全てを理解し了解している場合であって、昇進を含む全体が一体の取引と認識されうるものであり、かつ、その契約内容について当事者双方の意思が十分に合致していると考えられるような場合には、次のランクへの昇進が必ずしも「取引条件の変更」に該当しない場合もありうると考えられる。しかしながら、契約書やパンフレットに昇進条件等に関する記述が一応なされていて、一定の説明がされていても、実際にはシステムが複雑な場合も多く、当初の取引開始時に、昇進した後の取引条件等について当該個人が十分に理解をしていないようなことが多いと思われ、このため、双方の間で昇進後の取引条件を含めて十分な合意ができていないと考えられる場合には、やはり、昇進は取引条件の変更と認められ、改めて昇進後の取引条件を説明した上で、新たに書面を交付することが必要となる。
(2) 法第33条第2項の「統括者」について
(イ) 「統括者」と「連鎖販売業を行う者」との関係について
 連鎖販売業に係る契約形態は多種多様であるため、通常一つの連鎖販売業の組織と見られている多段階構造の組織の加盟員のうち何れの者が「連鎖販売業を行う者」に該当するかはそれぞれの組織によって異なる。
 契約の締結を組織の中心となる者が集中的に行う場合には、通常、その組織の中心になる者が「統括者」であり、組織の各加盟員は「勧誘者」に該当すると考えられる。
 また、本部は最上位のランクの者との間でのみ契約を締結し、以下のランクの者は自己の直近上位の者との間で特定負担を伴う取引を行う場合には、最下位のランクの者を除いて、それぞれのランクの者が「連鎖販売業を行う者」となり得る。
(ロ) 「一連の連鎖販売業を実質的に統括する者」について
 一連の連鎖販売業についてその運営の在り方を統括的、実質的に決定している者である。実際の連鎖販売業には多種多様なものが存在し、これを実質的に統括する者の要件を形式的に決定することは困難である。
 このため、個々の事例においては、本項に例示された「連鎖販売業に係る商品に自己の商標を付す」「連鎖販売業に係る役務の提供について自己の商号その他特定の表示を使用させる」「連鎖販売取引に関する約款を定める」「連鎖販売業を行う者の経営に関し継続的に指導を行う」等の行為の有無を一応の判断基準としつつ、その組織の実態に即して判断することになる。
 
2 法第34条(禁止行為)関係
(1) 「勧誘者」について
 勧誘者とは、統括者が勧誘を行わせている者であり、統括者以外の連鎖販売業を行う者が勧誘を行わせている者は該当しない。
 具体的には、まず統括者から勧誘の委託を受けて、説明会等で専ら勧誘を行う者が該当するほか、明示的に勧誘を委託されてはいないが、自分自身の勧誘と併行して、他の者の勧誘をも推進している者(例えば、各地域で説明会を主催する地域代理店の地位にいる者)も該当することになる。
 また、統括者である本部が個々の会員とそれぞれ連鎖販売取引についての契約を集中的に行う形態、すなわち会員Aが他の会員Bを探してきて本部に紹介し、本部が会員Bと契約するというような形態の場合には、本部が当該会員Aに勧誘を行わせているものと解されることから、当該会員Aは法上の「勧誘者」に該当することが一般的であると考えられる。
(2) 「その連鎖販売業に係る商品の販売若しくはそのあつせん又は役務の提供若しくはそのあ
つせんを店舗等によらないで行う個人」について
 本条、第37条、第38条第2号及び第3号並びに第40条の規定は、販売等を店舗等によらないで行う個人を相手方とするものに適用を限定している。法人及び店舗等によって販売等を行う個人は、商取引に習熟しており、本法による保護の対象とする必要がないものと推定し、適用から除外したものである。
 一般に学生、主婦等は自らの店舗を有していることはあまりなく、この店舗等によらないで販売する個人に該当するものが一般的である。また、勧誘する相手が店舗等を有していても、その連鎖販売業に係る商品の販売、役務の提供等を当該店舗で行わない場合には、店舗等によらないで営業する個人となる。
(3) 「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる」について
(イ) 商品の性能、品質又は権利若しくは役務の内容について類似のものと比較して著しく劣る場合にそれを告げないことは、事実の不告知に該当する。
(ロ) 特定負担に関する事項について
 例えば、入会金1万円のほかに商売をするためには商品の購入が前提となっているにもかかわらず、「このビジネスを始めるために必要な負担は1万円のみで、他には一切必要ない。」と告げることは不実の告知に該当する。
(ハ) 契約解除に関する事項について
 例えば、本法でクーリングオフの期間が法第37条第2項の書面の受領日(再販売の場合商品受領日かいずれか遅い日)から20日間認められているにもかかわらず、8日間と告げたり、「参加者の個人的な都合によるクーリング・オフは認められません。」等と告げることは、不実の告知に該当する。
 また、契約解除の条件について民商法の一般原則に比し不利なことを告げないことは事実の不告知に該当し得る。
(ニ) 特定利益に関する事項について
 例えば、確実に収入が得られる保証がないにもかかわらず、「このビジネスに参加すると誰でも確実に7桁の月収が得られる。」等と告げることは不実の告知に該当する。また、安易に高収入が得られる話のみを強調し、そのような可能性が稀有であるにもかかわらず、可能性の乏しさ、困難さに全く言及しない場合には、事実の不告知に該当し得る。
(ホ) 「連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」について
 「当該取引が連鎖販売取引であること」が重要事項に該当し得るかという点については個別具体の事例によって異なるが、取扱商品の内容、再販売の条件や特定負担、特定利益等といった取引内容の詳細がすべて告知されている場合に「連鎖販売取引である」旨を告げなかったという一点をもって直ちに重要事項の不告知に該当するとは必ずしも言えないが、例えば、相手方が連鎖販売取引か否かを尋ねているにもかかわらず「連鎖販売取引ではない。」と告げる場合には不実の告知に該当する。
 また、「経済産業省に認められた商法である。」と告げることは不実の告知となるほか、統括者や連鎖販売取引を行う者の経営が破綻の危機に瀕している場合にその財産状況等を告げないことは事実の不告知となり得る。
(4) 「連鎖販売業を行う者(統括者又は勧誘者以外の者であつて連鎖販売業を行う者に限る。)」について
 統括者又は勧誘者でもある者が連鎖販売業を行う場合においては、法第34条から第36条、第38条及び第39条の規定の重複を避けるため、連鎖販売業を行う者としての規定ではなくそれぞれ統括者、勧誘者としての規定を適用することとし、「連鎖販売業を行う者」の中から「統括者又は勧誘者」に該当する者を除外する。なお、法第37条及び第40条の規定については、「連鎖販売業を行う者」として適用する。
(5) 「その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約の締結について勧誘をするに際し」について
 連鎖販売業を行う者が自ら直接締結する連鎖販売取引についての契約についての勧誘をする場合だけでなく、例えば、多段階式構造の組織において自己の傘下の他の連鎖販売業を行う者が締結する連鎖販売取引についての契約について補助的に勧誘を行う際に不実の告知を行った場合も本条の規定に該当することとなる。
 
3 法第35条(連鎖販売取引についての広告)関係
 (1) 法第35条の適用を受ける広告について
 本条でいう「広告」には、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等のマスメディアを媒体とするものだけでなく、チラシの配布、店頭の表示やダイレクトメール、インターネット上のホームページ、パソコン通信、電子メール等において表示される広告も含まれる。
 (2) 省令第25条第2号に定める「電子情報処理組織を使用する方法」については、第3節(通信販売)関係1(4)を参照されたい。
 「連鎖販売業に関する業務の責任者」とは、連鎖販売業に関する業務の担当役員や担当部長等実務を担当する者の中での責任者を指すものであり、必ずしも代表権を有さなくてもよい。
 (3) 法第35条第3号に定める「連鎖販売業に係る特定利益」についての表示方法について
 この規定は、連鎖販売取引についての広告において、いとも簡単に多額の収入が得られるような誤解を招く広告が見られることにかんがみ、特定利益について広告をする場合には、その根拠となる具体的な計算方法の表示を求めるものである。
 具体的には、特定利益の性質に応じて、顧客がその計算方法を正しく理解できるよう表示しなければならない(省令第26条第2項第1号)。例えば、「各販売員に支払う特定利益は、それぞれの者の過去1か月の販売実績の○%」といった計算式を表示しなければならない。
 また、ある一定のノルマを達成しなければ特定利益が支払われないなど、特定利益の支払について特定の条件があるときには、上記の計算方法に加えて、その条件の内容を表示しなければならない(同項第2号)。
 さらに、「年間○百万円の収入が可能」といった表示をする際には、実際に販売員の中で、それと同等の額の特定利益を得ている者が多数を占めることなど、事実に基づく根拠を示し、実際以上に高収入が得られるかのような見込みを持たせないようにしなければならない(同項第3号)。
 
4 法第36条(誇大広告等の禁止)関係
 (1) 法第36条の適用を受ける広告について
3(1) を参照されたい。
 (2) 「著しく」の解釈について
   第2章第3節(通信販売)関係2(1) を参照されたい。
 (3) 省令第27条第1号の「商品の性能、品質若しくは効能」、「役務の内容若しくは効果」及び「権利の内容若しくはその権利に係る役務の効果」について
   第2章第3節(通信販売)関係2(2) を参照されたい。
 (4) 省令第27条第3号「特定負担に関する事項」について
   例えば、入会金1万円のほかに再販売をするためには商品を購入しなければならないにもかかわらず、「このビジネスを始めるために必要な負担は1万円のみで、ほかには一切ない。」といった広告表示は本条に違反することになる。
 (5) 省令第27条第4号「特定利益に関する事項」について
   例えば、確実に収入が得られる根拠がないにも関わらず、「このビジネスに参加すると誰でも○○円の月収が得られる。」といった一定額の収入が得られる確率が高いと誤認させるような表現の広告表示は本条に違反することになる。また、このような広告表示は、特定利益についての具体的な計算方法を表示していないことから、法第35条にも違反することになる。3(3)を参照されたい。
 (6) 省令第27条第5号の解釈については、第2章第3節(通信販売)関係2(3)を参照されたい。
 
5 法第37条(連鎖販売取引における書面の交付)関係
(1) 法第37条第1項に規定する書面について
(イ) 書面の交付義務者について
 連鎖販売取引に伴う特定負担についての契約は、通常、連鎖販売業を行う者が当事者となるが、連鎖販売業を行う者以外の者が特定負担についての契約を締結する場合は、その者が書面交付義務者となる。例えば、業者がAを誘引し、Aが業者以外のBに対して特定負担を負った上、業者との間で連鎖販売組織への入会等に係る契約(連鎖販売取引についての契約)を締結する場合には、特定負担についての契約を締結するBが、連鎖販売業を行う者でなくとも、書面交付義務者となる。
(ロ) 書面の記載事項について
@省令第28条第1項第3号の「商品の性能若しくは品質に関する重要な事項又は権利若しくは役務の内容に関する重要な事項」とは、当該商品の販売等の事業を開始するに当たって、商品等の価値を判断する要素となる事項である。記載すべき事項は商品、権利又は役務によりまちまちであるが、あくまで客観的な事実の記載でなければならず主観的、あいまいな記載は本号の記載とはみなされない。具体的には、商品の成分、役務を提供する者の資質等はこれに該当することとなる。
A省令第28条第1項第6号の「連鎖販売業に係る特定利益に関する事項」について
 特定利益の提供方法等は各組織により多種多様であることからその記載方法についても様々な方法が考えられるが、いずれにせよ、当該連鎖販売業において得られる利益のしくみについて取引の相手方が理解し得る形で記載する必要がある。例えば、「販売金額と仕入れ金額の差額のほかボーナスとして月間取扱金額の○%があなたの収入になります。」、「あなたが勧誘した販売員の売上額の○%をバックマージンとして支払います。」、「新規販売員を一人紹介する毎に紹介料として○円を支払います。」等が挙げられる。
B省令第28条第1項第9号の「法第34条に規定する禁止行為に関する事項」について
 契約の締結について勧誘をする際又は解除を妨げるために不実のことを告げること、相手方を威迫して困惑させて契約を締結させたり解除を妨げることが本法により禁止されている旨を記載する必要がある。具体的には、次のような記載例が考えられる。
    (記載例)
 
    当該ビジネスを行うに当たっては、相手方に以下の事項を十分説明して下さい。
@商品の種類、性能、品質等(又は権利、役務の種類及び内容)について
A入会金や商品購入等この取引に伴う負担について
B契約の解除(クーリングオフを含む。)について
Cこの取引において得られる利益(販売利益、ボーナス、紹介料等)について
Dその他、この取引の相手方の判断に影響を及ぼす重要な事項について
 勧誘に際して、又は契約の解除を妨げるために上記の事項について、事実と異なることを告げると特定商取引に関する法律により罰せられます。
 また、契約を締結させ、又は契約解除を妨げるため、相手方を威迫して困惑させると同じく特定商取引に関する法律により罰せられます。
 
(2) 法第37条第2項に規定する書面について
 法第37条第2項に規定する書面は、契約締結後、遅滞なく交付する義務があるが、勧誘の際に交付した書面、すなわち法第37条第1項の書面として交付した書面等は、たとえ本項の必要的記載事項の記載があったとしても、本項の書面の交付とはみなされない。本項の書面の交付は、契約内容を明らかにし、後日契約内容を巡るトラブルが生じることを防止するという趣旨に加えて、法第40条第1項の規定を前提に、既に契約をした者にその契約についての熟慮を促すという目的をもつのであるから、前項の書面をもって本項の書面に代えることは許されない。 
 
(3) 概要書面(法第37条第1項)と契約書面(法第37条第2項)について(商品の種類等について)
 概要書面においては、「商品の種類及びその性能若しくは品質に関する重要な事項又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容に関する重要な事項」、契約書面においては、「商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の種類及びその性能若しくは品質又は施設を利用し若しくは役務の提供を受ける権利若しくは役務の種類及びこれらの内容に関する事項」の記載が求められている。
 この規定に従い、商品販売の場合、契約書面では、全ての商品に係る情報を記載した書面(多くの商品を扱う事業者の場合、通常、製本したパンフレット)を交付することが求められる。これに対して、概要書面においては、「重要な事項」を記載することで足りるものであり、商品の品目数が少ない場合にはすべての商品について性能・品質を記した書面を交付するべきであるが、多くの商品を取り扱う事業者の場合には、主要な商品に係る情報を記載した書面を交付することがあり得る。この場合においても、契約締結前の説明過程において、全ての商品に係る情報を顧客に提供し、その十分な理解を得るべきことは当然であって、上記のような契約時に交付するパンフレットを顧客に提示し、十分に説明を行い、その内容について理解を得ることが必要となる。
 
6 法第38条(指示)関係
 (1) 法第38条第1号の解釈について
  第2章第2節(訪問販売)関係4(1) を参照されたい。
(2) 法第38条第2号の解釈について
 本号は、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき判断の提供を対象とするものであり、事実を告げるものは本号の対象とはならない。誤解を生ぜしめるように事実を告げることは法第34条第1項若しくは第2項に該当するか否かの問題となる。なお、店舗等によらないで営業する個人を相手方とするものに適用を限定していることについては、2(2) を参照されたい。
(3) 法第38条第3号の解釈について
 「契約を締結しない旨の意思を表示している」とは、明示的に「いらない。」、「やる気はない。」等と告げる場合のみならず、黙示的に契約締結を嫌っていることを示した場合も含むものである。
 「迷惑を覚えさせるような仕方」については、第2章第2節(訪問販売)関係4(3)(イ)を参照されたい。
(4) 省令第31条の解釈について
(イ) 第2号
 本号は、連鎖販売業を行う者(統括者又は勧誘者以外の者であって連鎖販売業を行う者に限る。)が「故意に事実を告げない」場合を規定しており、統括者又は勧誘者が「故意に事実を告げない」場合については法第34条第1項に該当する。なお、2(3) を参照されたい。
(ロ) 第3号及び第4号
 「その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約の締結について勧誘をするに際し」については、2(5) を参照されたい。また、唆す行為と事実不告知、不実告知、威迫困惑等は時間的に同時又は近接したものであることを要しない。
(ハ) 第5号
 「その連鎖販売業を行う者」とは、統括者が統括する一連の連鎖販売業を行う者のことである。また、唆す行為と書面の不交付等は時間的に同時又は近接したものであることを要しない。
(ニ) 第6号
「未成年者その他の者」には、未成年者、老人等が一般的には該当し得るが、判断力が不足している場合にのみ適用されることとなる。
(ホ) 第7号
「その他の事項」とは、顧客の信用能力についての情報(持家の有無、勤続年数、収入等)が中心であるが、特にこれに限定するものではない。
 
7 法第40条(連鎖販売取引における契約の解除)関係
(1) クーリング・オフ期間の起算日について
クーリング・オフ期間の起算日は、原則として、「第37条第2項の書面を受領した日」である。クーリング・オフができる旨及びその方法について記載されている書面を受領していない場合は、クーリング・オフをする権利が留保されていることとなるのは法第9条の場合と同様である。
ただし、以上の原則の例外として、法では「その契約に係る特定負担が再販売をする商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の購入についてのものである場合において、…その引渡しを受けた日」と定めている。
すなわち、商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の再販売をする者との連鎖販売取引に伴う特定負担が、当該商品の購入である場合又は取引料の提供と当該商品の購入双方である場合であって、商品の引渡しを受けた日が契約内容を明らかにする書面の交付の日よりも後である場合には、書面が交付されても20日間の期間は進行せず、商品の引渡しを受けた日から進行することとなる。なお、特定負担が、商品の購入と取引料の提供双方である場合は、取引料を支払った日がいつであるかにかかわらず、特定負担として購入した商品の最初の引渡しを受けた日と契約内容を明らかにする書面の交付された日との、いずれか遅いほうの日が起算日となる。また、「再販売をする商品」とは、再販売をする者が取り扱う商品を意味しており、再販売用に購入する商品のみならず、自己消費用に購入する商品も含まれる。
(2) クーリング・オフの効果について
 法第40条は、契約の解除の効果については第3項の規定に加え、「連鎖販売業を行う者は、その契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない」旨のみを規定しており、その他は一般法の原則によることとなる。したがって、契約の当事者双方は、原状回復義務を負い、連鎖販売業を行う者は、既に受け取った商品代金及び取引料を返還しなければならないし、契約の相手方は、既に引渡しを受けた商品を返還しなければならない。
 法第37条第1項括弧書の場合、すなわち、連鎖販売取引についての契約を締結する者とその連鎖販売取引に伴う特定負担についての契約を締結する者が異なる場合は、連鎖販売取引についての契約の解除が行われたときは、特定負担についての契約の締結を行った者が既に受け取った商品代金、役務の対価又は取引料を返還しなければならない。
 
第5章(業務提供誘引販売取引)関係
1 法第51条(定義)関係
 (1) 業務提供誘引販売業について 
業務提供誘引販売業の形態は、物品の販売に係るものと役務の提供に係るものに大別される。
「物品の販売(そのあつせんを含む。)」とは、自ら物品を販売することに加え、販売の相手方を見つけ、販売の仲立ちをすることを含むものである。なお、ここでいう「物品」とは、法第33条第1項の規定(「物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下同じ。)」)により、権利の販売を含むものである。
「有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)」とは、自ら有償で行う役務の提供を行うことに加え、「有償で行う役務の提供の事業」を行う者がする役務の提供の相手方を見つけ、提供の仲立ちをすることを含むものである。
 (2) 「業務提供利益」について
「業務提供利益」とは、顧客を勧誘する際の誘引の要素となる利益であり、その利益とは、提供又はあっせんされる業務に従事することによって得られる収入のことである。法は「その商品又はその提供される役務を利用する業務(その商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんを行う者が自ら提供を行い、又はあつせんを行うものに限る。)に従事することにより得られる利益」と定義している。
「業務」とは、内職、仕事、モニター業務等といったものの総称であり、例えば、業務提供誘引販売業を行う者とその顧客(業務提供誘引販売取引の相手方)との間の委託契約、請負契約、雇用契約、代理店契約等を含むものである。
「その商品を利用する業務」とは、販売の目的物たる物品(商品)を利用して行う業務のことである。例えば、販売されるパソコンとコンピュータソフトを使用して行うホームページ作成の内職、販売される着物を着用して展示会で接客を行う仕事、販売される健康寝具を使用した感想を提供するモニター業務、購入したチラシを配布する仕事などが該当する。
「その提供される役務を利用する業務」も同様に、有償で提供を受けた役務を利用して行う業務のことである。例えば、ワープロ研修という役務の提供を受けて修得した技能を利用して行うワープロ入力の内職などが該当する。
当該「業務」は、「その商品の販売」等を行う者が「自ら提供を行う」もの又は「あつせんを行う」ものであり、商品の販売等をする者と業務の提供をする者が異なる場合であっても、商品の販売等をする者が業務の提供をあっせんする場合には、本条に該当することとなる。
 (3) 「収受し得ることをもつて誘引」について
物品の販売に当たって、契約書等で顧客が「利益」を「収受」すること(具体的には、業務を提供してそれによって収入が得られること)を条件として明示しているような場合に限定されるものではなく、勧誘時の説明等によって、実態として、「利益」を「収受し得る」との期待を抱かせて、商品を購入等するよう誘えば、本条に該当することになる。当然、現実に「利益」を「収受」したかどうかを問わない。
 (4) 「特定負担」について
特定負担とは、業務提供誘引販売取引に伴い顧客が負うあらゆる金銭的な負担が該当する。
例えば、提供される業務に関して課される業務量のノルマや提供される業務を行うために必要な研修への参加行為であって金銭的な負担ではないものそれ自体は、特定負担には該当しないが、業務を行うために利用する商品の購入代金や研修等の役務の対価の支払代金は特定負担に該当する。また、登録料、入会金、保証金等があれば、それらの費用は「取引料」であり、特定負担に該当する。
 (5) 「取引条件の変更」について
「取引条件の変更」とは、商品の販売価格、役務の提供価格等の条件の変更、業務提供利益の授受等業務の提供条件の変更等のことである。
 
2 法第52条(禁止行為)関係
 (1)「その業務提供誘引販売業に関して提供され、又はあつせんされる業務を事業所等によらないで行う個人」について
本条、第55条、第56条第2号及び第3号並びに第58条の規定は、事業所等によらないで業務を行う個人を相手方とするものに適用を限定している。法人及び事業所等を構えて業務を行う個人は、一般的に商取引に習熟したものと考えられ、これら条項による保護の対象とするまでの必要がないものと考えられることから、適用から除外したものである。
また、事業所等を有していても、内職等の業務を当該事業所で行わない場合、例えば、店舗を構えてある分野の事業を行っている個人事業主がその分野と無関係の業務として内職を行うような場合には、本法の適用の対象となる。
ここでの「事業所等」とは、当該業務を行うことを目的とし、相当程度の永続性を有する施設を意味する。例えば、自宅とは別に、店舗や事業専用の場所を構えて、そこで永続的に業務を行う場合や、関係する業規制法上の許可や届出等の適正な手続をした上でこれに対応した実質のある事業を行っているような場合については、一般的にこの「事業所等」に該当するものと考えられ、このような場所で業務を行う個人は、通常、これら条項の適用の対象外となる。
一方、例えば、自宅の一室に私用のために置いているパソコンを使って業務を行うような場合には、一般的には「事業所等」には当たらず、このように自宅で業務を行う個人は本法の適用の対象となる。
なお、個人が業務提供誘引販売業を行う者との間で「代理店契約」を締結する場合もあると考えられるが、本法の適用の対象となるかどうかは、業務の提供についての契約の名称や形式によって決まるものではなく、個人が「事業所等」により業務を行っているかどうかという実態によって判断されるものである。
 (2) 「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる」について
(イ) 商品の性能、品質又は権利若しくは役務の内容について類似のものと比較して著しく劣る場合にそれを告げないことは、事実の不告知に該当する。
(ロ) 特定負担に関する事項について
例えば、業務に必要な1万円の商品購入のほかに、業務の提供を受けるためには事実上有料の講習を受講しなければならないにもかかわらず、「この内職をするために必要な負担は1万円の商品購入のみで、ほかには一切ない。」と告げることは不実の告知に該当する。
(ハ) 契約解除に関する事項について
例えば、本法でクーリングオフの期間が法第55条第2項の書面の受領日から20日間認められているにもかかわらず、8日間と告げたり、「個人的な都合によるクーリングオフは認められません。」等と告げることは、不実の告知に該当する。
また、契約解除の条件について民法の一般原則によるところに比し不利な条件を契約に盛り込みながら、故意にそれに言及しないことは事実の不告知に該当する。
(ニ) 業務提供利益に関する事項について
例えば、確実に収入が得られる保証がないにもかかわらず、「月収○○万円は確実なので、それで商品購入の支払は大丈夫。」等と告げることは不実の告知に該当する。また、安易に高収入が得られる話のみを強調し、収入を得るためには事業者の実施する試験に合格しなければならないことや一定の基準に満たない内職の成果物については報酬を支払わないことなどの条件があるにもかかわらず、故意にそれに言及しない場合には、事実の不告知に該当する。
(ホ) 「前各号に掲げるもののほか、その業務提供誘引販売業に関する事項であつて、業務提供誘引販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」について
  例えば、業務提供誘引販売取引について経済産業省が許可又は認可を行うような制度となっていないにもかかわらず、「経済産業省に認められた商法である。」と告げることは不実の告知となるほか、業務提供誘引販売業を行う者の経営が破綻の危機に瀕している場合にその財産状況等を故意に告げないことは事実の不告知となり得る。
 (3) 法第52条第2項の解釈について
第2章第2節(訪問販売)関係3(2)を参照されたい。
 
3 法第53条(業務提供誘引販売取引についての広告)関係
 (1) 法第53条の適用を受ける広告について
 本条でいう「広告」には、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等のマスメディアを媒体とするものだけでなく、チラシの配布、店頭の表示やダイレクトメール、インターネット上のホームページ、パソコン通信、電子メール等において表示される広告も含まれる。
 (2) 省令第40条第2号に定める「電子情報処理組織を使用する方法」については、第3節(通信販売)関係1(4)を参照されたい。
「業務提供誘引販売業に関する責任者」とは、業務提供誘引販売業に関する業務の担当役員や担当部長等実務を担当する者の中での責任者を指すものであり、必ずしも代表権を有さなくてもよい。
 (3) 法第53条第3号に定める「その業務の提供条件」について
(イ) 省令第41条第2項第1号「業務の内容」について
例えば、「手書き文章をワープロで清書する内職です。」というように業務の内容について具体的に表示しなければならない。
  (ロ) 省令第41条第2項第2号「一定の期間内に業務を提供し、又はあつせんする回数、業務に対する報酬の条件など、業務の提供又はあつせんの態様に応じて、当該業務の提供又はあつせんについての条件に係る重要事項」について
例えば、ワープロ入力業務の場合、月にどの程度の頻度で業務を提供するのか、文字当たりの報酬単価がいくらか、といった業務の提供・あっせんの条件の概要を表示しなければならない。
  (ハ)省令第41条第2項第3号の解釈について
「月間○万円の収入が可能」といった表示をする際には、同じ業務を行っている者の中で、それと同等の額の収入を得ている者が多数を占めることなど、事実に基づく根拠を示し、実際以上に高収入が得られるかのような見込みを持たせないようにしなければならない。
 
4 法第54条(誇大広告等の禁止)関係
 (1) 法第54条の適用を受ける広告について
3(1) を参照されたい。
 (2) 「著しく」の解釈について
   第2章第3節(通信販売)関係2(1) を参照されたい。
 (3) 省令第42条第1号「特定負担に関する事項」について
例えば、業務に必要な1万円の商品購入のほかに、業務の提供を受けるためには事実上有料の講習を受講しなければならないにもかかわらず、「この内職をするために必要な負担は1万円の商品購入のみで、ほかには一切ない。」といった広告表示は本条に違反することになる。
 (4) 省令第42条第2号「業務提供利益その他の業務の提供条件に関する事項」について
例えば、確実に収入が得られる保証がないにもかかわらず、「月収○○万円は確実なので、それで商品購入の支払は大丈夫。」等といった広告表示は本条に違反することになる。また、収入を得るためには事業者の実施する試験に合格しなければならないことや一定の基準に満たない内職の成果物について報酬を支払わないなどの条件があるにもかかわらず、安易に高収入が得られる話のみを強調するような広告表示も本条に違反することになる。なお、このような広告表示は、業務の具体的な提供条件を表示していないと考えられることから、法第53条にも違反する。3(3)を参照されたい。
 (5) 省令第42条第3号の「商品の性能、品質若しくは効能」、「役務の内容若しくは効果」及び「権利の内容若しくはその権利に係る役務の効果」について
 第2章第3節(通信販売)関係2(2) を参照されたい。
 (6) 省令第42条第5号の「国、地方公共団体、著名な法人その他の団体又は著名な個人の関与」の解釈については、第2章第3節(通信販売)関係2(3)を参照されたい。
 
5 法第55条(業務提供誘引販売取引における書面の交付)関係
(1) 法第55条第1項に規定する書面の記載事項について
(イ) 省令第43条第1項第2号の「商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の種類及びその性能若しくは品質に関する重要な事項又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容に関する重要な事項」とは、当該商品を購入するに当たって、商品等の価値を判断する要素となる事項である。記載すべき事項は商品、権利又は役務によりまちまちであるが、あくまで客観的な事実の記載でなければならず主観的、あいまいな記載は本号の記載とはみなされない。具体的には、パソコンの処理能力、ワープロ研修を提供する者の資質等はこれに該当することとなる。
(ロ) 省令第43条第1項第7号について
本号で規定されるいわゆる「抗弁の接続」は、業務提供誘引販売業を行う者との間で、クーリングオフや瑕疵担保責任による解除等の抗弁事由がある場合に、ローン提供業者又は割賦購入あつせん業者に対してその事由をもって対抗し、支払請求を拒むことができるという趣旨であり、この点を相手方に認識させ明確化するため、この旨の記載を求めたものである。
(2) 法第55条第2項に規定する書面について
(イ) 法第55条第2項に規定する書面は、契約締結後、遅滞なく交付する義務があるが、勧誘の際に交付した書面、すなわち法第55条第1項の書面として交付した書面等は、たとえ本項の必要的記載事項の記載があったとしても、本項の書面の交付とはみなされない。本項の書面の交付は、契約内容を明らかにし、後日契約内容を巡るトラブルが生じることを防止するという趣旨に加えて、法第58条第1項の規定を前提に、既に契約をした者にその契約についての熟慮を促すという目的をもつのであるから、前項の書面をもって本項の書面に代えることは許されない。
(ロ) 法第55条第2項第2号の「商品若しくは提供される役務を利用する業務の提供又はあつせんについての条件に関する事項」は、顧客が業務提供誘引販売取引を行う際の重要な判断要素である業務の提供条件を明確に書面に記載させることによって、業務の提供に係る契約内容と業務に必要な商品等の購入に係る契約内容が一体の契約内容であることを明らかにするものである。
本号に基づく記載は、省令第45条第2項に規定するところにより、重要な契約条件として、詳細かつ明確な記載が求められる。具体的には、業務の内容を示す明確な記述のほか、例えば、「一日当たり○○文字分のワープロ入力業務を1か月に最低○○日間継続して提供する。」というような業務量、「○○文字当たり○○円の報酬を支払う。」というような単価、それらに基づく業務提供利益の計算方法等を、具体的に紛れない表現で表示しなければならない。また、例えば、業務に関して課されるノルマがある場合や事業者の都合で一定の場合に業務を提供しないとか、清書が一定の美しさでないと報酬を支払わないといった条件がある場合にはその内容を具体的に表示することが必要であり、さらに、報酬が支払われる時期・方法等についても、具体的に表示しなければならない。
 
6 法第56条(指示)関係
(1) 法第56条第1号の解釈について
  第2章第2節(訪問販売)関係4(1) を参照されたい。
(2) 法第56条第2号の解釈について
 本号は、判断の提供を対象とするものであり、事実を告げるものは対象とならない。誤解を生ぜしめるように事実を告げることは、法第52条第1項に該当するか否かの問題となる。
(3) 法第56条第3号の解釈について
 「契約を締結しない旨の意思を表示している」とは、明示的に「いらない。」、「やる気はない。」等と告げる場合のみならず、黙示的に契約締結を嫌っていることを示した場合も含むものである。
 「迷惑を覚えさせるような仕方」については、第2章第2節(訪問販売)関係4(3)(イ)を参照されたい。
(4) 省令第46条の解釈について
(イ) 第2号
「未成年者その他の者」には、未成年者、老人等が一般的には該当し得るが、判断力が不足している場合にのみ適用されることとなる。
(ホ) 第3号
「その他の事項」とは、顧客の信用能力についての情報(持家の有無、勤続年数、収入等)が中心であるが、特にこれに限定するものではない。
 
7 法第58条(業務提供誘引販売取引における契約の解除)関係
(1) クーリング・オフ期間の起算日について
 クーリング・オフ期間の起算日は、「第55条第2項の書面を受領した日」である。クーリング・オフができる旨及びその方法について記載されている書面を受領していない場合は、クーリング・オフをする権利が留保されていることとなるのは法第9条の場合と同様である。
(2) クーリング・オフの効果について
 法第58条は、契約の解除の効果については第3項の規定に加え、「業務提供誘引販売業を行う者は、その契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない」旨のみを規定しており、その他は一般法の原則によることとなる。したがって、契約の当事者双方は、原状回復義務を負い、業務提供誘引販売業を行う者は、既に受け取った商品代金及び取引料を返還しなければならないし、契約の相手方は、既に引渡しを受けた商品を返還しなければならない。
 
第6章(雑則)関係
1 法第59条(売買契約に基づかないで送付された商品)関係
 「送付」とは「ある場所又は人から他の場所又は人に物を送り届けること」であり、送り届ける手段は限定されない。
 したがって、例えば相手方の留守の間に商品を置いていった場合、相手方の了解なしに強引に商品を置いていった場合等通信手段によらないで販売業者が直接商品を送り届けたとしても本条の「送付」に該当することとなる。
 
2 法第60条(主務大臣に対する申出)関係
(1) 「何人も」とは、直接の利害関係者に限らず、また、個人、法人、団体を問わず、誰でも申出ができる趣旨である。
(2) 「申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる」について
 申出の具体的手続は、省令第47条において定められており、主務大臣に対して申出をしようとする者は、様式第2に定められた申出書を提出しなければならない。この申出書には、申し出を行う者の押印が必要である。
(イ) 「申出に係る取引の態様」には、訪問販売、通信販売若しくは電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引又は業務提供誘引販売取引のいずれの取引についての申出かを記載する。
(ロ) 「申出の趣旨」には、取引の公正及び購入者等の利益が害されるおそれがあると認める
事実、主務大臣に対して求める措置並びに当該措置を必要とする理由等につきなるべく具体的かつ詳細に記載することが望ましい。
(ハ) 「その他参考となる事項」としては、個別のケースにより異なるが、例えば、受領した
広告物や契約書その他の書面、同様の被害を受けた者の証言等の他、消費生活センター等の意見等が考えられる。
 申出先は、法第67条に規定する主務大臣であり、経済産業大臣又はそれぞれの商品等に係る事業を所管する官庁の大臣に対し申し出ることとなる。このうち、訪問販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引及び業務提供誘引販売取引に係る申出については、実際に当該取引が行われている地域の都道府県知事にも申し出ることができる。
(3) 「必要な調査」について
 申出の趣旨に係るような事実があったかどうかについて、関係当事者(販売業者、役務提供事業者、統括者、勧誘者、連鎖販売業を行う者、業務提供誘引販売取引を行う者、消費者等)から事情を聴取し、あるいは、法第66条の報告徴収、立入検査等を行うことである。
(4) 「この法律に基づく措置その他適当な措置」について
 申出の趣旨が、調査の結果事実であった場合には、このような状況を是正するため、事業者に対する指示、業務停止命令の発動、行政指導、消費者啓発活動の充実等の措置を講ずることとなる。


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